⑤大学生の頃 1

オペラのアリア

オペラは歌付きのお芝居です。

その中に アリア(独唱)があります。

とても美しくドラマチックな部分なので、

アリアのみ歌われることが多く、 

わたしも 少し取り組みました。

 

物語を把握することが難しい

アリアを歌うということは、その物語を把握しなくてはいけません。

歌詞だけでは 少なくとも わたしにはストーリーが分かりません。

解説があるので 読むとわかるはずなのですが・・・

わたしには 理解がしづらくて

何度も何度も読んで、やっとなんとかわかります。

登場人物の名前、関係、気持ち その頃の時代背景・・・

大学の視聴覚室に オペラのCDはあるものの DVDはありません。

とにかく そのオペラを聴く機会を作ることが

大事になって来るわけです。

オペラは大体3時間の大作なので

一日に1回聴くとお腹いっぱいになります。

しかも ものすごい声量で歌うお芝居は 外国語です。

歌詞を見ながら聴く・・・もう ちんぷんかんぷんです。

わたしの人生は 音楽と愛である~と

イタリア語で永遠に歌うわけですから・・・

 

ありがとう、ドミンゴ

日本では ビゼーのカルメンが人気ですね。

最後にどうして 大の男がカルメ~~ン!!と倒れながら歌うのか・・・・

わたしは 永い間理解出来なかったのです。

ある時、ドミンゴ主演のオペラ映画「カルメン」を観て、

ああ、そうなんだ~とやっとわかりました。

映画にまたしても助けてもらいました。

もっとも わたしが カルメンのアリアを歌うことはありませんでしたが・・・

 

オペラ嫌い

そんなわけで わたしは オペラを 聴くのも歌うのも苦手なわけです。

でも 授業でオペラに出なくてはいけない。

合唱の脇の脇役で出させていただきました。

舞台裏って すごい人で一杯で ものすごい慌ただしさです。

本当にいろんなことがあります・・・

全員がすごいお化粧と衣装で身を包み

汗だくになって 動き回るのです。

人間関係も激戦です。

オペラが本当に好きで、情熱がないと 絶対に出来ないことです。

 

フランス歌曲との出会い

いつものように 視聴覚室でレコードを聴いていました。

偶然に プーランク歌曲集を聴くことができました。

アンニュイなフランス語の発音で歌う旋律、

ピアノは もはや伴奏ではなく独奏です・・・

人間の声とピアノが 官能的に絡み合う・・・

フランスへ行ったことがないのに

フランスの光や香、音が思い浮かんでくるのです。

すっかり わたしは フランス歌曲に恋をしてしまいました。

 

喫茶らるご

阪急岡本にクラシック音楽喫茶があって

その横に 中古レコード屋さんがありました。

いかにも 古い音楽がお好きなんだろうなと

想わせる 小柄で少し気難しそうな老紳士が

お一人で管理されておられました。

グレーのシャツに グレーの毛糸のチョッキ、

グレーの髪に グレーの毛糸の帽子

そしてメガネを少しずらしておいででした。

 

古いプーランク歌曲集の2枚組のレコードがあり、

とても欲しかったのですが、

とても高くて買えませんでした。

 

しばらくして またふらりと行ってみました。

買うつもりもなく なんとなく居心地が良いからです。

そうしたら なんとその老紳士が

カセットにダビングしたものを わたしに譲ってくれるというのです。

わたしは もう嬉しくて嬉しくて お礼を言って急いで家に帰り、

何度も何度も聴きました。

カセットは5本でした。

ちゃんと解説もコピーして入っていました。

フランス歌曲に魅せられたことは いうまでもないことでしょう・・・

名前も存じ上げず その後お礼にも伺わず

なんて無礼な小娘だと思われたでしょうね・・・

本当にありがとうございました・・・

大学卒業後、フランス ニース パリ音楽院夏季講習で

フランス歌曲を習いに行ったのは

ここに原点があるといっても 過言ではありません。

わたしの心の中には いつもフランスの美しい風景と音楽があるのです。